1973年12月、よしだたくろうライブ73というアルバムが出た。「青春の詩」「人間なんて」「元気です。」「伽草子」「オンステージともだち」「オンステージ第二集」のあとだったことになる。今から思うとのちのちに残る曲がずらりと並んでいるのだが、僕の印象は悪かった。ライブ収録ということもあり音が雑に聞こえたのである。「元気です。」「や「人間なんて」の感動はこのアルバムからは感じられなかった。
しかし、今、収録曲を見てみるとほとんどを知っているし、口ずさんできている。ただ1曲をのぞいては。
その1曲とは「都万の秋」である。「つまのあさは~ねむったまま~むこうのはまじゃ~おおきないかがてですくえるんだよ~」と1番の歌詞は口ずさんだことがあったが、まさか「つま」という漁村の近くに半世紀後住むなんて思ってみなかったし、意識もしなかった。
ブログのコメントで吉田拓郎の歌に「都万の秋」というのがありましたねというのを読んで、ハッとしてすぐに「都万の秋」をYouTubeで聴いて、歌詞を読んでびっくりした。岡本おさみが旅好きで「襟裳岬」や「竜飛崎」という詞を書いていたのは知っていたし、襟裳岬にも竜飛崎にも行ったのに、まさか都万という漁村の歌があるとは気づいていなかった。
2番の歌詞は「隠岐の島は逃げるとこなし盗人だってここじゃどこにも隠れられない」と明確に「隠岐の島」が登場する。
3番では「海のきげんをとってきた都万のおかみさんたち ひと荒れすりゃひと年も老けてきた」とある。
島後に住んでまだひと月もたたないが、なんとなく歌詞の空気はわかるような気がする。岡本おさみの旅の本があったと思うからさがして読んでみたくなった。それにしてもだ。「都万の秋」の都万がわが家から15分のところにある漁村だとは思わなかった。