場所に関係なく起こる事故
危険な場所では一歩一歩を注意して歩くし、鎖場や岩場などは慎重かつ真剣に歩く。
対して平地や尾根道などでは気は緩み、意識散漫で笑顔で口笛吹くようなルンルンランランで歩く場合が多い。
山の平地は整備されていない道がほとんどで、さまざまな障害物、危険物があるのだが、それらを我々は「危険」という認識では歩いてはいない。
普通に当たり前だと考えて山道を歩く。
たまには「うわあ~、荒れているなあ~」と思う道は平地といえども難しい道もある。
転倒の原因になるものをあげてみる。
転石、浮き石、横木、倒木、木の根などがある。
また、木道、木の段、階段、桟道、岩角、岩の段差などひとつ間違えば大事故につながる場所もある。
桟道(さんどう)について
僕は本格的な桟道を歩いたことはないが、高所恐怖症の人には厳しい道になるだろう。(僕も桟道は苦手だ)
桟道とは、山腹のきりたった崖(がけ)などに沿って、木材で棚(たな)のように張り出して造った道。
絶壁に沿ってかけた橋の道のことである。
特に中国の蜀の桟道が古来名高い。
横木(よこぎ・よこぼく)
僕がイメージしているのは建築などでいう横木ではなく、道に横たわっている木の枝や竹切れのことである。
長さも50cmから1mくらいの普通の木切れである。
これが曲者(くせもの)なんだ。
歩行していると脚は右脚が前の出て左脚がうしろの状況を設定しよう。
するとその左右の脚の隙間に、この木切れが絶妙に絡まってくるのである。
右脚と左脚に木切れ竹切れが絶妙なタイミングと形状で挟まった場合、平地であっても転倒した経験がある。
一度や二度ではない。
転ばずによろめいて、ああ、危ない危ないと思ってその場を立ち去る場合もあるのだが。
これらは、いわゆるヒアリハット(インシデント)とよばれている事象である。
ヒアリハットのついでに「ハインリッヒの法則」についても再度勉強しておこう。
ハインリッヒの法則とは?
ハインリッヒの法則は、労働災害における経験則の一つである。
1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、
その背景には300の異常(ヒヤリ・ハット)が存在するというもの。
労働現場での法則が山歩きでの安全チェックにもつながり、深刻な遭難事故を防ぐことになる。
僕自身がヒアリハットが多いのは、やはりそういう山を選び、山道を選択し歩いているからだと思う。
またその人の性格や嗜好(ピストンは嫌いだとか)にもよるので、ヒアリハットが多い場合は、自分自身の行動や登山計画を常に「道迷いや遭難ありき」でつくることが大事なのかもしれない。
ま、つまずいても、滑ってしりもちをついても、それがヒアリハット(インシデント)だと自覚することが難しい。
木の根、木道、木段が苦手だ!
木の根、木道、木段が苦手だという意識が強いから、木に関係した道を歩くときは神経質になる。
滑るからである。
登山靴の前部分にはグリップがきいていても、後ろ部分がグリップ力が弱いと感じている。
長時間長距離を歩いた登山靴のグリップ力はかなり劣ってきているし、無い場合もある。
実際に実験的に木の根っこ部分を登山靴の後ろで踏んでみてほしい。
間違いなく滑る!
体重移動というか、下山の正しい歩行ができていないとも考えられるのだが。
どちらにしても不完全な僕ら人間が自然の中を歩かせてもらうわけだ。
登山ベテラン者にはベテランであるがゆえの危険さがあり、僕ら初心者には初心者であるがゆえの危険さがある。
どの道、この「危険」と隣り合わせで楽しんでいるのが登山であり低山歩きなんだということかな。