山歩きの始め方

日帰り低山の楽しみ方・10

はじめに

「どこの山に行きたいのか」「どのくらいの高さの山に登るのか」「いつ歩くのか」「どのくらいの距離を歩くのか」「初めての山か、複数回歩いた山か」「誰と行きたいのか」「何か目的があるのか」「お昼は何を食べようか」「行動食は何を持っていこうか」「飲み物は何を」等考えることはたくさんある。8年間日帰り低山歩きをしてきての楽しみを自分なりにまとめておく。

日帰り低山歩きのわずか4時間から8時間くらいの間に、これも楽しむのか!というようなことを「楽しむ」という気持ちで取り組むのと取り組まないのでは全然違う。ザックをいくつも持ってる人にとっては、どのザックを持っていくかを選ぶことや、登山靴をどの靴をはいていくか?服は何を着ていくか?帽子は?などを考えること悩むことも「楽しみ」だと思えばいいわけである。登山口まで車で行く人は、着くまでに聞く音楽を何にしようかなんてのも楽しみにしてしまうわけだ。楽しむを強く意識するかしないは生きることを楽しむことにつながる。

①計画を楽しむ

まずは「いつ?」「どこの山へ?」「ソロで?誰と?」を計画することが最初であろう。週一で登山する人、毎月1回登山する人、半年に1度登山する人。それぞれによって違うだろう。ここでは「日帰り」「低山」に絞って書くが、その日帰り低山歩きでも、縦走とかおかわり登山とかなると計画は緻密になる。何時に出発にして、何時頃までに下山するかは季節によっても違ってくる。持っていく水(飲料水)の量も夏と冬とでは違う。行動食一つにしても夏にチョコレートは悲惨な結果を招く。ま、細かいことは体験する中で学んでいくし、まわりに登山のベテランがいたら聞いていけばいいのだ。とりあえず計画の第一は「山」を決めて、地図を用意することだろう。「地図を準備」と安易に書いたが、登山アプリがここまで広まった現在、地図は準備しないで登山アプリで計画する人が多いと思う。ま、登山、山歩きの計画を楽しむことを意識すると60代から始める低山歩きは断然楽しくなる。楽しむ以前に重要なことでもある。

➁準備を楽しむ

計画にせよ準備にせよそれなりの「時間」が必要だ。仕事が忙しかったり悩みがあったり家庭がうまくいっていなかったら、この「時間」を確保することが難しい。時間はあるのだが「時間がない」という思い込み(ストレス)に包まれていたら「準備を楽しむ」も「計画を楽しむ」もなかなか難しいことかもしれない。難しくても、準備を楽しむを書いていく。では、具体的に準備とは何があるのか?登山靴やザックや雨具はここでは既に用意していることとして話をすすめる。ざっくり4月から10月までを夏と考えよう。夏場には熱中症対策と防虫対策という2大対策を準備する必要がある。僕の場合は熱中症対策は二度の体験から水分、塩分を中心に事前準備をかなりする。氷系のものを持参することもオススメである。防虫対策は防虫ネットとハッカ油を持参する。キンカンも必ず持っていく。11月から3月までを冬だとする。冬場は防寒ということを意識するが低山歩きの場合、衣類を気温に応じて着たり脱いだりするレイヤードを考えることが大事だと実感している。ベースレイヤー(下着)ミッドレイヤー(中間着)アウターレイヤー(防風防水防寒)の3つに分けて考えると楽だ。基本ミッドレイヤーで行動して、食事時に上からアウターを着るようにしている。準備を楽しむは万が一の場合も考えての準備だから楽しむばかりではいけない。テイッシュ、ハンカチタオル、飲料水、行動食、充電器を最低持っていくように心がけている。財布(お金)や眼鏡の予備もザックには常備している。

③登山口までを楽しむ

車で行く人、バスで行く人、電車で行く人、自宅から歩いていく人、それぞれその山によって違うだろうが、共通していることは自宅の玄関を開けたらそこに登山口(とりつき)があることはない。山を歩く以前に登山口まで行かねばならない。初めて登る山の場合、この登山口をさがす(見つける、調べる)のが割と大変である。有名山の場合は、ガイド本に駐車場と登山口の紹介がされている場合が多い。今ならばYAMAPの地図でもある程度確認することができる。登山口のマークの上を長押ししたらGoogle地図にすぐアクセスできる。なんて便利になったんだろうと思う。「登山口までを楽しむ」はこの登山口まで行く手段と時間も登山の重要なものとして「楽しむ」という意識をもてるかどうかなのである。例えば、僕の場合は車で登山口駐車場をめざす場合が多い。すると車の中で聴く音楽は何にするか?高速道路を利用する場合はどこのサービスエリアに寄り、行動食は何を買おうか?などなど楽しみ方はたくさんある。福岡から久住までだと約2時間、長崎方面だと3時間、天草までだと約3時間半はかかる。この時間を「楽しむ」かただ移動するかでは大いに違う。「楽しむ」という強い意識と意思が必要である。

④登りを楽しむ

現地に着く。ここでは「現地」を登山口もしくは登山口駐車場と考えよう。有名山の場合は近くにトイレが設置されている場合が多いが、無名山の場合はトイレはほぼない。ゆえに現地に着くまでのコンビニとかでトイレをすませておくことも重要である。さて、ツアーの登山者たちは正しく準備体操をしている方たちもいるがほとんどの人は簡単に足首をクネクネさせて、屈伸運動をするくらいで歩きはじめる。登山口ではお辞儀するのが望ましい。山の神さまに向かって「よろしくお願いします」という気持ちでお辞儀をする。そして登り(歩き)はじめよう。早朝から歩く場合が多いから、木々や石コロや山道に「おはようございます」と声をかけながら歩く。この声かけにより天からエネルギーが体内に降り注いでくる。つまり気合が入る。30分くらい歩いたところで、「今日の体調はいかがですか?」と自分の体にたずねる。つまり学校で行う健康観察を自分でするのである。声に出してするともっとよい。夏場でのこのセルフ健康観察は熱中症対策として有効である。寝不足、疲れが残っている場合はそれなりのスピードや休憩を多めにとりながら歩く必要がある。とにかくこの登りの時間こそ登山の中心的楽しみなのだから。季節の花をさがす人、小鳥のさえずりに耳をかたむける人、写真を撮る人、個々さまざまの独自の楽しみ方をしながら歩いていく。

⑤休憩の楽しみ方

タイムを計りながら速さを求めて歩く人もいる。60代からの低山歩きでは、いかに疲れないで山頂をめざすかということを大切にしたい。そこに目標を置いた場合、歩くスピードをいかにマイペースで歩くかも重要であるが、休憩をとるということが大切になる。斜面を登るという活動は、平地を歩くのとはまったく違う筋肉を使うらしく、疲れ方もちがってくる。この疲れることも楽しみなのであるが、その疲れも程々にしておかないと事故や遭難につながる。そこで休憩という時間を楽しむというのが重要になってくる。ここでの楽しみはやはり行動食だ。水を飲む、お茶を飲む、少し甘い飲料水を飲む、スポーツドリンクを飲む、人それぞれに工夫してくる。同時に行動食をつまむ。一口羊羹、チョコレート、クッキー、飴玉などなどこれもそれぞれに好みを持参して楽しむ。同行者がいたら分け合って食べるのも楽しみのひとつになる。

⑥山頂を楽しむ

花や鳥や写真撮影などが目的の人の中には山頂をめざさない人もいるが、多くの登山者はやはり山頂をめざす。そして山頂標識山頂プレートを写真におさめる。あるいは標識やプレートと並んで記念写真を撮る。これは登山という過程の中で最も喜びにあふれる時間である。「よくがんばった」「自分の力でてっぺんまで歩いてこれた」など自分で自分をほめてあげたい時間がほんの数分だがもてるのである。その山頂が10年ぶりだったら感慨深くなり感傷にふける人もいるだろう。20年ぶり、30年ぶり・・・山とはそういうサイクルでおとずれる場合も多くある。僕は低山歩きを始めて9年目になる。9年前、8年前に歩いた山に再び会に行きたいと思い始めている。「歳をとったこと」「年月が流れたこと」を喜びとして味わいたいと思っている。山頂にはそんな楽しみが待っているのである。

⑦ランチを楽しむ

お昼ご飯(ランチ)を食べるのも多くは山頂の場合が多い。人気の山、有名山では多くの人たちが、場所を確保して、それぞれ持参した「お昼」を食べている。ひとりで食べるより二人で食べたほうが楽しい。二人より三人四人のほうがもっと楽しい。それ以上になると僕は苦手だ。むしろソロで食べるほうが感覚が冴えわたったような感じでいい場合がある。そして食後の珈琲。山頂で食べるラーメンと並んで人気なのが山頂で飲む珈琲なのだ。特に冬の山で飲む熱い珈琲は最高なのである。山頂での時間は40分~60分と考えて計画をする。ついつい長くなってしまう場合が多いからだ。そして記憶に鮮やかに残るのもこの山頂からの眺望であったり、食べたものである場合が多いのである。あ、デザートのフルーツとかも心に深く刻まれるものだ。あの甘さが疲れた体には染みるのだろう。※ちなみに僕はソロの場合、9合目あたりとか少し眺望のある所で食事をすることが多かった。なんかまわりに気を使いながら狭い山頂でのランチよりも、自分ひとりでの自由なランチと珈琲が合っていると感じていたからだ。登山道に座り込んで食事をしていると、必ず通る人に挨拶されたり、声かけられたりするのも思い出になる。

⑧下山を楽しむ

山頂で下山前にを靴紐を結びなおすことは重要である。登山靴を脱ぐという行為は正直面倒くさい行為である。が、靴紐は緩んでいる場合が多いし、靴のなかに小さな何かが入っている場合もある。余裕がある場合は、僕は靴を脱ぐだけでなく、靴下をも脱いでウェットテイッシュで足をふいたり足の指先をもんだりしたことがある。これはやってみるとなかなか気持ちがいい。特に夏場は汗をかいているのでひんやりとすることによって疲れを軽減させる効果もあるような気がする。とにかく下山という最も危険な活動にはいる前に靴紐を結びなおして、足と靴をしっかり固定させることだ。そこではじめて危険な下山を楽しむ準備ができる。そこまでしても事故や遭難のほとんどは下山で起きているというデータがある。グローブ(手袋)をはめること、ストックを利用する人は長さを調節することも下山を楽しむための準備になると思う。あと「あわてない」「あせらない」ということを強く意識することだ。下り道はスピードが出る。勢いがついてしまう。そして休憩をとりにくいという環境が多い。下山時でも休憩をとり、行動食をとるのは事故遭難にならないための重要なポイントかもしれない。下山を楽しむとは危険を予知しながら危険を楽しむことなのかもしれない。

⑨下山終了を楽しむ

下山を終えた時の達成感は、山頂に着いた時の達成感とはまた違うものがある。下山直後に忘れてはならないのは下山口(=登山口)での感謝のお辞である(この感謝のお辞儀は忘れる場合が多い)。腰や膝に故障をもちながらの登山者にはより大きな達成感と安堵感を抱く時間である。日常の中にあって「山を歩く(登る)」というのは非日常的なお祭り的な時空間である。その非日常的なお祭りが終わる時が、この下山終了の時間であろう。そこが駐車場だと仮定しよう。ここで重要なのは整理体操である。車で移動の人は特に登山靴からスニーカーにはきかえる際に足首やふくらはぎを中心に整理運動をすべきである。なぜか?筋肉は疲労している。そしてこむらがえりがいつ起きてもおかしくない状態になっている場合が多いからである。足の指、足の裏、ふくらはぎ、太ももを下山後には揉むことを心掛けている。僕の場合、この足がつる体験を何度かしていく中で、芍薬甘草湯を下山前に飲むことなどで回避するようにしている。帰りの車で高速道路を運転中に足がつったときは事故を起こす寸前だった。たまたまパーキングがあったからそこに入って命が救われた経験がある。

⑩活動日記を楽しむ

これはYAMAPなどの登山アプリを使っている人限定の楽しみ方かもしれないが、撮った写真などをアップしながらその日の登山(低山歩き)をスマホで簡単に記録することも実は楽しい。YAMAPのことしか知らないからYAMAPのことで話すなら、活動データーとして「要した時間」「活動した距離」「上りの距離」「下りた距離」などが記録されていて、これを見る(確認する)のもおもしろい。また「平均ペース」とか「消費カロリー」などもわかるようになっている。僕的には平均ペースが速くならないように歩くことを心がけている。「距離」に関しては、自分の山歩きはだいたい12キロくらいが限界だと自分の体力(気分)に合った時間や距離をイメージできるようになりつつある。しかし、9年前の自分と今の自分が違ってきていることも考慮して活動するようにしている。「60代から始める低山歩き」もまもなく「70代から始める超低山歩き」へと改名するつもりである。

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コックン

2014年12月(当時59歳)に近場の低山歩きを始めた。 これから山歩き(登山)をはじめようと思っている方や福岡県内の里山や無名山に興味関心がある方々向けて情報発信したいと考えている。 福岡県の低山・里山・無名山以外にも駅舎や神社、コミュニティーバスなども好きである。

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