NHK「逆転人生 日帰り登山のはずが…地獄のサバイバル14日間」を見て
再放送で見るのは二度目だったが、あらためて「道迷い」について考えるきっかけとなった。
遭難事故のあらまし
①当時30歳で東京都大田区の会社員だった多田純一さんは、登山歴1年で、「今まで登った山よりも高い山に挑戦したい!」との思いから、2010年8月14日の朝、埼玉県の秩父市・小鹿野町にまたがる標高1723メートルの山である『両神山(りょうかみさん)』に一人で入る。
②母親には、「くさり場のある、秩父の百名山に登ってくるね」と伝えたが、登山ポスト見落とし、登山計画書(登山届)を提出し損ねるミスを冒したことで、その後、窮地に追いやられる。
③さらおに、途中で二手に分かれている道で、「下りは別のルートを進もう!」と考えるミスを冒したことで事故に遭う。別のルートを進んでいるうちに、次第に未整備の荒れた道になっていくことに焦って足を取られ、崖を転がり落ちる。
④沢まで転がり落ちてようやく止まるが、左足は激痛が走り、よく見ると折れた太い骨が皮膚を突き破って飛び出して、そこから血が噴き出していた。出血を止めるために、シャツを割いた布や携帯灰皿のひもで縛ったが、できる処置はそれだけ。歩くことはできず、大声で叫んでも誰にも届かず、携帯も圏外。
⑤遭難2日目になっても左足の出血が止まらないので、映画で観たことがある熱したナイフで傷口を焼いて出血を止める方法を激痛に耐えながら繰り返して何とか出血は止まったが、遭難3日目には数十匹のウジ虫が湧いてしまう。
⑥さらに、遭難3日目にして、唯一持っていた7個のあめ玉を食べきってしまったので、それ以降は、空腹を凌ぐためにアリやミミズを食べ、喉の渇きを癒すためにペットボトルに入れた自分の尿を飲む。
⑦この頃、山の麓では多田さんの捜索活動が行われていたが、登山計画書(登山届)を提出しておらず、唯一の手掛かりは母親が覚えていた「くさり場のある、秩父の百名山に登ってくるね」という言葉だけ。それだけでは場所を絞ることができず、捜索活動は難航した。
⑧しかし、ボランティアで遭難者の救助をしていた方の発案で捜索チラシを作ると、遭難9日目にして西武秩父駅前のレストランの店員から有力な目撃情報が入り、防犯カメラの映像をチェックした結果、多田さん本人であることが確認できた。これをきっかけに、交通系ICカードの記録から両神山に入ったことが判明する。
⑨遭難10日目には、雨で沢が増水して溺れかけ、リュックが流されてしまうが、岩に這い上がって命は助かる。そして、遭難14日目に流されたリュックが見つかり、その後、隊員2人に救助された。
奇跡なのかたまたまなのか?
冒頭で三浦雄一郎が「奇跡です」というのは、遭難してから14日間たって生存して発見救助されることは、ほとんどないそうなのだ。
このグラフを見ると遭難して何とか生き延びるのは2日間だと考えていい。
しかし季節(特に冬場)によっては1日だろう。
多田さんは真夏だったことによって、ケガしたところにウジがわくという体験をされたが、寒さや低体温に対しては乗り切られてる。
なんといっても食料である。ミミズやアリを食べ、自分の尿で水分をとるというまさにサバイバルであり、誰もができるかどうかは疑問である。
検証をする
①は普通の感覚であり、問題点はない。ただ多田さんは行動食が飴玉7個と少ないがそれでもお昼のおにぎりと、ま、普通の感覚である。
②登山届を出さなかったことが捜索を困難にしたことはわかるが、登山届(登山計画書)を出す山は有名山がほとんどで、僕が歩く低山のほとんどには登山届はない。
→僕の場合は登山開始と同時(YAMAPをスタートすると同時)に妻の携帯に行先の通知が送られるようにしている。これがある意味登山届である。
以前はメモ紙に「○○山へいく。何時ごろ帰宅予定」と書いて、テーブルに置いてから山歩きに出かけていた。
③「下りは別のルートで」という感覚は登山者の多くが抱く感覚ではないだろうか。結果的に遭難事故になったからこれを「ミス」と言われているが、この「別ルート」の魅力は仮にミスであってもなくすことは難しい。
④携帯圏外。低山においてもこういうポイントがある。
→携帯電話を2機持って山歩きしている人がいるのを知って、これはいい!と思って今は真似している。仮に圏外という不運に遭遇うしても携帯の充電器は必ず持って行くようにしている。
⑤ファーストエイドではすまないような骨折をされた多田さんは、それでも自力で応急手当をされている。すごいことだが必死になると何かをしょうとするのが人間(生き物)だと感じる。
⑥行動食の常備を教えられる。(サラミソーセージ、マシュマロ、カロリーメイトが僕の頭には非常食として浮かぶ)
⑦⑧捜索チラシとレストランの店員さんの目撃情報。ここに「奇跡」的事象を感じる。
⑨雨の増水から川に溺れそうになりながら大切なリュックを流される、その流されたリュックを捜索隊の方が見つけるという点が二つ目の「奇跡」だと感じた。
やはりこうして検証してみても、三浦氏が言うように「奇跡」がいくつか起こらないと助からないのが「登山事故」「遭難事故」な情報のかもしれない。