前日と当日のあらまし
2018年2月20日。
神奈川県の平塚市のホテルに泊まっている。
前日、三浦半島の武山→砲台山→三浦富士を歩ている。(約6キロ)
このミニ縦走の疲労がおそらく当日の曽我丘陵でのシャリバテにつながっていると今は考えることもできる。
とにかく2日間の関東滞在の間に1つでも多くの座(ランドマーク)を歩くことを意識していたことは確かだった。
ちなみにシャリバテという言葉も症状もまだこの頃は知らない。
日記によると朝8時に大磯駅からスタートして、羽白山(坂田山)→湘南平(千畳敷)→浅間山(せんげんやま)→八俵山(やたわらやま)→高麗山(こまやま)→大磯駅と周回している。(5.3キロ2時間50分)
すでにこの時点で疲れていたというのがうかがえる。
で、重要なことは朝食を食べたかどうかだ。
朝食をとったかとってないかの記憶も記録もない。
ホテルのモーニングが今は6時30分からになっているが、以前は7時からだったことを考えると、どうもその日は歩くことを目的としてホテルを早々にチェックアウトしている可能性がある。
つまり朝食抜きである。
しかし、僕の性格性質上、何も食べないで朝から活動することはないので平塚駅周辺で何かを食べているはずだ。
「適当に」の危険性
大磯駅から浅間山、八俵山、高麗山を約3時間5.3キロの距離をミニ縦走周回したあと、大磯駅から国府津駅に移動し、さらに御殿場線で上大井駅に昼前に着いている。
このあたりで冷静に考えれば、曽我丘陵も見直して北鎌倉あたりへ戻り、散策でもすればいいものを。(前日と合わせると12キロくらいを歩いているわけだから。この先、さらに12キロを歩くのは今考えると無茶な計画だ。いや無計画だ)
この時の僕には未知なる道を歩くという単なる好奇心の塊となっていた。
分県登山ガイド『神奈川県の山』の曽我丘陵①②を参考にして適当に歩くことにした」と活動日記にかいている。
この「適当に」が危険だということを知ることになる。
神奈川県の人たちなら地理状況がわかると思うが、九州福岡の僕らには曽我丘陵も御殿場線も大磯も国府津(こうづ)駅なんてまったくなじみのない地名なんだ。
とにかくJR御殿場線の電車に乗って上大井駅というのをめざしている。
ここで想定外だったことは、上大井駅近くにはコンビニもお店もないことだった。
平塚か大磯で食料(昼食)や行動食を買うべきだったと思うのは、今だから思うのであって、その時は、先へ先へ、先へ行けばコンビニがあるさ的な「適当な」感覚だった。
上大井駅付近の自販機で飲み物だけは買った記憶がある。
この飲み物だけが、この先に待っているシャリバテ(ハンガーノック)を乗り越える命綱になるなんて考えもせず。
知らない土地での「行った先でなんとかなる」は何ともならない
「行った先のコンビニでおにぎりやおやつを買えばいさ」
この甘い感覚は上大井駅で下車した時に崩れた。
崩れたが、それでもまだ「道を歩いていくうちに何かあるかもしれない」と、あくまで行った先でなんとかなるかもという気持ちは捨てていなかった。
飲み物を少し多めに買ったことが救いだった。
ちなみに、YAMAP登山計画を立てるようになってから「行動食」ありという項目があり、行動食(移動食)という登山用語があることを知った次第である。
当然、2018年2月段階では行動食の認識はない。
行動食の認識はなくても、おやつという小学生の遠足程度の認識はもっていた。
だがこの時は、食料、行動食、飲料水のうちの食料と行動食を持たずに歩き始めたわけである。
そして適当な計画(=無計画)が低山歩きといえど命取りになることをすぐ体験することになる。
11時44分、上大井駅をスタートしている。
シャリバテ体験に向かって突入していくようなものだった。
後編につづく。