レスキュー隊登場!
「山田さ~ん!」
ぼーっとしはじめていた頭に何か声らしきもが聞こえた。
かつては応援団長もしたことがあるので大声には自信がある。
「ここで~~~す!」
叫んだ。
ジェントスの懐中電灯を取り出して、光をグルグルまわして助けを求めた。
その声は「久しぶりに聞く」人の声のような気がした。
まさに「神の声」「天使の声」だった。
オレンジ色のレスキュー隊員が上からくるものだと、懐中電灯を上に向かってふっていたんだが、崖下から出現したのには意表をつかれた。
レスキュー隊員との会話
レスキュー隊員の姿が3人見えた。
その中のひとりに話しかけられ、ほかの二人は周囲でガサガサと救助活動の準備なのか安全ルートの確認をしている気配だった。
体の安全を確認する会話をしたあと具体的な救助方法についての説明がされた。
僕が居る場所から三日月湖のほうへ下るという救助だと理解した。
救助方法は3つ。
- 歩けそうならば救助隊員と一緒に自力で下りる
- 歩くのが無理ならば救助隊員がおぶって下りる
- 毛布とビニール袋に体ごと包んで崖から滑り落とす
救助隊員はイケメンの若者だったが体格的には僕とあまり変わらないので、76キロの体重の僕をおぶって下るのは不安だったので断った。
3の毛布とビニール袋に包まれて運ばれるのが一番楽そうに思えたが、準備に時間を要すると言われてためらった。
自分の足で地面を踏んで歩けると判断し、1を選んだ。
避難ポイントからダム湖までの救助様子
太いロープのついた相撲まわしのような頑丈そうな装備を手際よく僕の体に装着していくレスキュー隊員だった。
カシューン、ガチャという金属のつなぎ部分が接合されていく音が大袈裟にも聞こえたがたくましく安心な音に聞こえた。
僕は素直な61才の初老男性だった。
「山田さん、やばいと思ったら私の肩でもどこでもいいからつかんでいいですから」
「わかりました」
レスキュー隊員が僕に密着するようにして下山をはじめた。
ほぼ崖のイメージだった。
真剣にロープを持つ手に力をこめながらゆっくりゆっくりおりていった。
「ウワー!」と別のレスキュー隊員が大声で滑り落ちる気配がした。
「○○、大丈夫か~?」
「大丈夫です!」
そんな見えないところでの事象に心配る余裕はない。
「山田さん、心配しないで、集中しておりましょう」
レスキュー隊員はあくまで僕の安全を第一に考えてくれる感じにすごく安心できた。
そして平らな下までおりた時の安堵感。
※写真はイメージ写真です。
そこから救急車まで
下にはたくさんのレスキュー隊員の方々が待っておられた。
リーダー的な少し年輩の方が「大丈夫ですか?」「まだ足元が悪いですから気をつけて歩いてください」と言われたことをおぼえている。
僕を崖をおりる際に寄り添ってくれていた隊員の姿はもうなかった。
眼鏡をしていないことを自覚する石ころゴロゴロの場所を抜けると、その先にピカピカと光る救急車やパトカーの回転灯が暗い三日月湖のふちに見えた。
「何かあったんですか?」
「山田さんの救助ですよ」
「・・・」
自分で発した質問が恥ずかしかった。
ダム湖ふちの舗装道を歩いて、いつもは巨大フェンスされている場所が大きく開かれて、そこには救急車をはじめパトカーなど数台の車が駐車して待っていてくれた。
(つづく)