2024年10月「露」「鶺鴒」「稲雀」「秋深し」「紅葉」「鵙」「秋惜しむ」
●満月の今を映すや夜の露
●結ばれて密か宿に露時雨
●芋の露妻の姿を隠しけり
●まほろばの里に朝露輝けり
●艷やかに鶺鴒の羽野原飛ぶ
●鶺鴒や伊邪那岐に尻を振れと云ふ
●人住まぬ茅葺の家秋深し
●峡空( かいぞら)を覆ひつくせし稲雀
●穭(ひつじ)穂のはるか昔も若々し
●紅葉傘差せばほほえむ道祖神
●枯枝の端にとまりし武蔵百舌
●嘴のさもありなむや百舌猛る
●姨捨の村で出逢ひしあれは百舌
●雨降りのオランダ坂に百舌の声
●秋惜しむ雑木に射し込む夕陽かな
●西国の友と集ふも黄昏か
●ハモニカを奏でし暮の秋遠し
●いちめんに犬蓼の原暮秋かな
●絵葉書の行き着く先も暮の秋
2024年11月「立冬」「冬紅葉」「石蕗の花」「時雨」「神無月」「大根」
●風呂の椅子尻につめたし冬に入る
●あるがままに日過ぎゆきぬ石蕗の花
●庭隅に慎ましやかに石蕗の花
●立冬や蟷螂果てし網戸下
●立冬や乳房もみもみ眠りゆく
●冬紅葉時の過ぎゆくままの午後
●冬紅葉過去も未来も染にけり
●気長足姫(おきなが)の座りし石に冬紅葉
●炭土を舞台に出でし石蕗の花
●生き死ぬも流れるままや片時雨
●岐路ありて過去を時雨が洗ひけり
●苔むした寺の石段夕時雨
●朝時雨詩人の訃報届きけり
●時雨傘たたみ珈琲たのみけり
●旅終へて顔を洗ろふや神無月
●注連縄を神有月に造る島
●霜月や雪をかぶりし伯耆富士
●指差した先に並びしおおねさま
●団欒や煮大根のある夕餉
●大根の太さ白さに微笑む妻
2024年12月「師走」「日向ぼこ」「冬の月」「炬燵」「冬の雷」
●寒月や昔話も萎みけり
●寒月や水に映りてやや動く
●八畳間炬燵の上に水平線
●炬燵から回覧板に返事する
●寒雷やみていた夢を忘れけり
●電気代気にする妻のクリスマス
●讃美歌を神社で歌う臨済宗
難聴のわれに届かぬ冬の雷
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